<<この記事は2015/09/15に投稿した記事となります>>

前編の続きになります。

度重なる失敗の末に迎えた春香トゥルーエンドで衝撃を受け、葛藤するプロデューサーにひとつの答えを与えてくれた「MASTER ARTIST01」について記載していきます。 MA01でまず強い個性を放っているのは「I Want」だと思います。春香のイメージとのギャップを感じられる曲となっているのは衆知の通り。他の収録曲は既存カバー曲の再録「大スキ!」、新規カバー曲「悲しみよこんにちは」、既存曲の「神さまのBirthday」「GO MY WAY!」「太陽のジェラシー」、新曲の「i」となります。 「I Want」以外は春香が歌うことに特別は違和感は感じない曲目になっています。

・MA01が与えてくれた答え どうあっても救われない春香について考えているとき、「I Want」を聞いて一つの思いが浮かびました。

「これってトゥルー後の病み春香が負の感情を歌った曲なんじゃないか?」

結論から書くと、完全に偏見でした。 ランクAまで抑圧したPへの感情の反動から生まれた春香の独占欲、支配欲が表れた曲なんじゃないかと。そして「悲しみよこんにちは」(の間奏部分)は、「大スキ!」とトークを挟んで生まれた「トゥルー後の感情をプラスに昇華させようとする」別のif春香が表れた曲なんじゃないかと思っていたんですね。実際にその後には明るい曲が続きます。また、既存曲の最後に入っているのが太陽のジェラシーなのが意味深に感じられます。 しかし、「I Want」の歌詞、「悲しみよこんにちは」の間奏部分を改めて聞くと別の側面が見えてきました。「I Want」の歌詞を区切って見ていきます。

まず、「心狂わす出逢い」。これをPとの出逢いのことだと仮定します。次に「胸にたぎる黒い鼓動は 目の前に立つ必死の顔が由来」の部分。ここはつい最近まで「黒い鼓動→サディスティックな感情」「目の前に立つ必死の顔→その感情の餌食となる対象の恐怖や焦りを浮かべた表情」のことだと捉えていましたが、これを「春香の曲」として、そしてトゥルーエンドを経験した春香の曲だとするなら、「胸にたぎる黒い鼓動→求める答えをくれないPへの絶望」「目の前に立つ必死の顔→春香をアイドルとしか見ずに必死にアイドルの道を死守しようとするPの表情」と見ることもできるのではないでしょうか。そして、ここがこの歌の入口だと考えています。

次の「どんな風に~そう喜劇」までの部分。 ここで直前の歌詞から時間が遡っています。「どんな風に捕まえたい?」というのは言うまでもなくどうPを自分のものにするか考えているところ、そして「喜劇」とは恋する女の子の感情でしょう。私は男なのでよくわかりませんが、多分そうです。次、「(いいわキミ そうよまっすぐ)~告白こそ罪だと教えるわ」の部分。ここも、カッコでくくられた部分は「自分に発言しようとする相手に対する上から目線の期待」、「告白こそ罪だと~」はその相手を蹴落とすことを明示しているのだと考えていましたが、ここも「春香の曲」として見ると「(いいわキミ そうよまっすぐ~)」はトゥルーエンド後の春香が別の世界線の、あるいは過去の自分に語りかけており、告白こそ罪だと教えるというのは「どうやっても結ばれることがないと分かっていて、その様を第三者目線から見ようとしている」という風に感じ始めました。すると、続く「恋愛感情の昂るままに命じるの」の部分も命じる相手はPではなく、あの頃の自分と見ることができます。 そしてサビ。「認めたいの あなたを 私のやり方で」春香の曲として考えると、春香の悲壮感を強く感じることができます。「認めたい」というのは「トゥルーエンドでの告白とその結果」で、「あなた」は「当時の自分」。そして「私のやり方」は「歌」でしょう。春香はやり場に困った負の感情を不特定多数に向けて爆発させたのではなく、しっかりと自分を見つめ、受け入れようとし、歌に昇華しているのです。しかしここで前回書いた持ち歌補正に目を戻してみましょう。歌で夢を叶えたことより愛する人と一緒にいることを選んだ春香にとって、この一曲で全て吹っ切ることは可能でしょうか。二番の歌詞後半に「離さないわ 二度とは 至福の地獄から」という歌詞があります。

察することができると思いますが、「至福の地獄」は春香のアイドルデビューから引退する直前までの期間のことです。結末は悲惨なトゥルーエンドですが、そこにいたる過程は春香にとって至福の時間だったでしょう。地獄とは、結末を知ったからこそ言える「過程と結末の落差がある世界」でしょう。つまり春香がPに恋した1年間のことです。トゥルーエンドを迎えた春香は、感情を抑えて未来に向かって歩くことができず、自分が幸せだった時間に自分を縛りつけようとしているのです。

そして、同収録曲「悲しみよこんにちは」の間奏部分。カバー曲ですが、語りの部分はオリジナルなので考察に値すると思ったので考慮に入れます。

「ステージが終わる 明かりが消えて ファンの歓声も消えてプロデューサーさんとの別れも近づいて…… でも、ううん、だからこそ、私は前を向かなきゃいけない あの人を悲しませたくないから そして、なによりも未来を信じているから!」

上記のセリフが間奏部分の語りです。これ、トゥルーエンド後の春香が歌ったとすると一見違和感があるのですが、「I Want」で過去の自分に向けて歌ったことを踏まえるとこのセリフもトゥルー後の春香が歌ったと言えるのではないでしょうか。そうだとすると、春香はここで自分の黒い思いを振り切っているように見えます。が、このセリフに注目すると、春香はこの中で自分の感情を押し殺しているんですね。「プロデューサーさんを悲しませたくない」は理解できますが、「未来を信じている」これはどうでしょうか。「至福の地獄」に自分を縛りつけようとしているのに未来を信じるなんて言えるでしょうか。ここには春香のアイドルとしての覚悟とPへの回答が秘められていると思います。トゥルーエンドで春香はPからアイドルとしての春香を大切にしていると言われました。アイドルを辞めたら戻ってきますと答えた春香ですが、すぐに引退することでプロデューサーが悲しむと判断してアイドルを続けることにしたのでしょう。そして、いつかくる引退の日。その日こそが、この間奏部分で春香の言っている信じる未来なのだと思います。さて、ここで「至福の地獄」に自分を縛りつけようとしているのに未来を信じることができるのかという点に話が戻ってきます。結局どっちなのよ?という感じですが、Pと春香で歩んだ最初の一年と、I Wantを歌った「トゥルーエンド後の世界」で春香がすることは本質的には変わらないと思っています。アイドル天海春香は、最初の失敗(トゥルーエンド)を無かったことにせず、記憶を持ち越して次の一年に進みます。プレイヤーと同じです。記憶を持ち越して、知識と経験を武器にさらなる活躍をしていくでしょう。華々しい引退をしてプロデューサーの元へと戻るために。 活動の流れだけに注目すると、我々プレイヤーが関与することができる「一年目の世界」と、春香がこれから歩み始める「トゥルーエンド後の世界」では展開は全く変わりません。春香がアイドルをやって、プロデューサーに告白をする世界です。両者の違いは、プロデューサーがそこにいるかいないかでしかありません。これは春香とプレイヤーがリンクしている部分になると思います。我々が関与することができないトゥルーエンド後の世界では、春香は「一年目の記憶と知識を持って」活動し、我々プロデューサーはその世界に介入することはできず一年目の春香と別れた後に「一年目の記憶と知識を持って」新たなプロデュースを開始するのです。ここで重要なのは、リンクしているのはあくまで「春香とプレイヤーである」という点です。ゲーム内プロデューサーの記憶は、どうやっても一年終了の時点で消滅します。プロデューサーの記憶に「トゥルーエンド後」はありません。つまり何が言いたいかというと、春香にとっては「トゥルーエンド後の世界」だとしても、その世界にいるのは一年目のプロデューサーであり、春香は一年目の結末を繰り替えすループに陥る……つまり「至福の地獄から抜け出すことはできない」ということです。多少強引ではありますが、こう解釈することでラスコンで持ち歌補整がマイナスであること、I Wantが春香の曲であること、悲しみよこんにちはの間奏部分のセリフの全てに整合性を持たせることができます。アケ・無印の春香は救われない。これが私の結論です。色々と希望を求めて考えましたが、I Wantが春香の悲壮感を表す歌詞であることに気付き、ようやくまとまりました。春香とPの世界は一年。至福の地獄に囚われた春香を救い出すことはできません。ものすごく後味が悪いですが、これはアイマスの魅力だと思っています。

以上です。